<北嶋誠士さんからのお便り>
皆さん、こんにちは。2000年卒の北嶋と申します。私は今、日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所に勤務しています。ジェトロと言うのは日本企業の海外ビジネスを支援する国の機関です。ご存じのとおり、ベトナムは、2007年1月にWTO加盟を果たし、高度経済成長を続けていることなどから、日本企業から大きな注目を集めています。そのため、当ホーチミン事務所は世界中にあるジェトロ事務所の中で、最も日本からの来客数が多いホットな場所となっています。こうした日本から来る企業にビジネス情報を提供したり、或いは、ベトナムに進出している日本企業向けに商談会や各種セミナーを開催するのが私の仕事です。
いま振り返れば、学生時代、自分がベトナムに駐在するなんて思いもしませんでした。当時の私は、ベトナムが嫌いと言う訳ではなかったのですが、大学1年の時に取った経営学や経済学の授業が面白くて、その勉強に熱中していました。他にも、貿易実務や通関士試験の勉強をしたりして、ベトナム以外の知識を身につけようと努力しました。ゼミも経営史と国際経済のゼミに入って、卒論も東南アジア経済について書きました。就職先にジェトロを選んだのは、大学で勉強してきたことを活かし世の中の役に立てると思ったからです。私にとって「大学で勉強してきたこと」とは、(ベト科の先生に怒られそうですが)ベトナム語ではなく貿易や経済の知識でした。
しかし、会社の人は、私のことを経済の人でも貿易の人でもなく、やはりベトナムの人として見ていたようです。これはもう外語大卒の宿命たるものです。入社したての頃は、何とかベトナム色を薄めようと努力していたのですが、仕事はベトナム関係のものを主に任されます。そうするうちに、ベトナムこそが自分の強みであり、他人と差別化できる点なんだと気付きました。経済を勉強してきたと言っても、しょせんは独学の域を出ず、専門教育を受けてきた人には勝てません。その頃になって「あ~、もっとベトナムのこと勉強しとけば良かったー」と後悔したものです。
そんな中途半端な私にチャンスが訪れたのは2004年のことです。お恥ずかしいことに、ベトナム語ができるはずのベト科卒にもかかわらず、会社の留学生として1年間、ベトナムに行く事になったのです。留学先のハノイではベト科の現役生たちと一緒に学校に通って、「いい年して何やってんだろ俺?」って思うこともありましたが、このとき初めて、ベトナムと正面から向き合い、ベトナムの面白さに気付きました。社会人になってベトナムデビューしたベト科卒業者も少ないと思いますが、その分、学生のような新鮮な気持ちを持って、ベトナムに取り組むことができていると思います。
そんなこんなで、私は、2008年2月からジェトロホーチミン事務所に勤務しています。赴任前、歓送会をしてくれた同期は「この年になって大変だね」と言った具合に心配してくれましたが、これは多分、学生時代の私の姿からは、ベトナムに行くなんて、信じられなかったからでしょう。3年ぶりにベトナムに戻ってきて、その変化には驚くばかりです。まずもって驚いたのは物価の上昇です。昨年のインフレ率は12.6%と、日本人にはちょっと想像ができない物価の上がりかたです。ちなみに、今日の私のランチは、ホットドックとフライドポテトで8万ドン!でした。何もかも安い時代はもう過去のものとなりつつあります。その分、ベトナム人も豊かになってきているとも言える訳ですが、これまでベトナムは人件費の安さを武器に外資を呼び込み、経済発展を遂げて来た訳ですから、そのモデルにも限界が見えつつあります。
これからベトナムがどのような発展経路を辿るのか非常に楽しみでありますが、日本との経済連携を強化することが、更なる成長に向けたカギになると考えています。そうした中、ジェトロが貢献できることは沢山あり、このタイミングで駐在できたことは非常にラッキーだと思います。ベト科卒の強みであるベトナム語を活かして、現地の生の情報源に直接アクセスし、よりリアルな仕事をやってゆきたいと考えています。
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